かんたからバトンを受け取りました、4年FWリーダーの大島夏輝です。

かんたは、深い洞察力や人望で今年のBKを導いてきたすごい男です。かんたの怪我持ちとは思えない勇敢なタックルがとても好きです。自分が怪我持ちになってその勇気をより強く感じています。

成城戦、絶対出て勝ちましょう。

僕はラグビーを高校から始め、大学でも4年間続けることができました。やっている中でつらいとかしんどいとか思うことは多々ありましたが、つまらないと思ったことは一度もありません。23年生きてきてラグビーより面白いものがなかったので、これから先が思いやられます。

なぜこんなに夢中になれたのか。それは、ラグビーを通じて人や自分のいいところを見つけることができるからだと思います。

我ながらいい子ちゃんかつ凡庸な解答だと思いますが、割と自信のある答えです。大体どのスポーツもそうだろ、と言われそうですが、別のスポーツをやっていたころには得られなかった感覚です。

ラグビーが特殊なのは、試合が危険な行為なしには成立しないということでしょう。タックルにしてもヒットにしてもスクラムにしても、普通に生活していれば人間が行うはずのない行動です。怪我だって絶えません。しかもそんなスポーツで勝てるようになるには、さらに苦しいことをしなければなりません。首の後ろが擦り切れるまでスクラムを組んだり、足が笑うまでスクワットをしたり、倒れてしばらく動けなくなるまでフィットネスをしたり。そんな苦労をするうちに、努力を続けるチームメイトのことをすごいな、と思い、信頼を深めていくことは非常に自然なことなのかもしれません。

しかもこの一橋ラグビー部には、全体練習に加えて各個人がスキルやフィジカルの向上に学年関係なく自然に取り組む風土があります。下級生が上級生に教えてもらうこともあれば、上級生から下級生に声をかけて課題に取り組むこともしばしばです。昨日も雨の極寒の中、ますこが「今日タックルするって言ったよな?」と瀧瀬に声をかけてタックル練をしていました。嫌だったら嫌って言っていいんだぞ。

とにかく、学年関係なくラグビーという危険極まりないスポーツに前向きに取り組める環境があり、それは今年になって特に強く感じる部分であり、本当にいいチームだなと思います。しかし、FWリーダー、幹部という立場でありながら自分がそのようなチームを作ることに貢献できたかはわかりません。冒頭に書いたようなことを本当の意味で感じることができたのも、最近のことです。いい機会なので、懺悔も込めて何を考えてラグビーをしていたのか少し振り返ってみます。

1.2年生の頃は、本当にただただラグビーをしていたと思います。大変ありがたいことに1年生の内から試合に出していただき、今よりだいぶ軽い体重でグラウンドを駆け回っていました。葛さんをはじめ堀内組の先輩たちにセービングやミスボールへの反応をほめていただけるのが嬉しく、泥臭さが自分の長所だと強く意識するようになりました。三商が終わった後、4年生から1年生全員へホテルでの食べ放題をプレゼントされ、チームを支えてくれてありがとう、と言ってもらいました。自分としては楽しくラグビーをしていただけなのに感謝されてうまい飯も食べられて最高だな、くらいの気分でした。スタメンとして試合に出ながらあまり勝つことが出来なかったにも関わらずです。チームというものに対してあまりに軽く考えていたなと、恥じ入るばかりです。

2年時は1年時以上に自分のことだけを考えてラグビーをしていた気がします。HO転向、コロナもあって体重を増やしたり、門屋さんやKCさんに教えていただきながらスクラムを形にするために練習したり、大変なこともありましたが毎日何かしら成長していく実感があり、楽しい日々でした。しかしKCさんという偉大な存在の影に隠れて気軽でいたことは認めざるを得ません。その年は学習院戦の最後10分ほど出てスクラムを崩しただけで終わりました。来年こそはHOとして試合に出て活躍しようと、そう思っていました。

しかし、3年の平本組ではHOとしての力のなさに気づかされ、それまで安穏とプレーしていたことを後悔しました。スクラムの難しさを痛感し、へいたに頼り切りでした。春先の成蹊とのユニット練ではボコボコにされ、何度も頭から落ちた影響か涙を流してしまいました。佐々木組であれば、自分が負けたらKCさんに代わってもらえば済む話でした。しかしもう、そうはいかなくなってしまいました。そんなことはとうにわかっていたはずですが、そのユニット練で強烈に実感したのを覚えています。その年からPRにチームのため転向してくれた樋口と一緒に、へいたに引っ張ってもらいながらどうにか頑張りました。努力が実ったと思えたのは、夏前の國學院との合同練でスクラムを押せたときでした。胸を張って相手HOを排除する感覚。ようやくHOになれたような気がしました。ここまで自分のことに手いっぱいだった僕でしたが、ようやくHOとして最低限仕事ができるようになり、このころからようやくチームのことを考えてラグビーができるようになったように思います。また、激しい練習やそれに伴う離脱者の続出に耐えかね、自分たちの代が4年生に対して体制の変更を要求したため、当然平本組の結果に対して責任があるということもあって、チームのために、という思いがここでようやく生まれたと思います。

ここで話はそれますが、チームのためという視点が欠けていたと書くと、下級生は自分に集中することが悪いことのように感じてしまうかもしれません。決してそうではありません。個人の実力の向上がなければチーム力の向上につながりませんし、なにより自分が楽しくありません。ラグビーの場合は危険も伴います。だけど自分にフォーカスする中でも、周りのことをよく見てみてほしいです。自分の今行っている自主練はほかの人とすればもっと効果のある練習になると気付くかもしれません。自分たちが上級生になったときにできているといいことが見つかるかもしれません。そうすれば、急に自分が一番手のHOになって焦った僕のようにはならなくて済むと思います。そしてなにより、周りもみんな頑張っているということに気づけます。

話を戻して、平本組の対抗戦は本当に体力的にも精神的にも苦しいものとなりました。責任がある、と分かっていながらもなかなかスローはうまくならず、スクラムも佐々木組の頃より全然押せませんでした。平本さんは自分が試合に出場できないもどかしさや無力さを強く感じていたと思います。東大戦に本当に何もできずに負けた後に放心状態になっていた平本さんを見て、大変なことをしてしまったと感じました。

そして4年生になりました。FWリーダーにはなったものの、FWには島田という強烈なリーダーがいて、スクラムはへいた、ラインアウトは後藤とスペシャリストもいたため、何をもってリーダーとなるべきか、と考えました。答えは単純でした。体を張ることです。1年のころから体を張ることで評価されてきた自分は、強みを生かすことでチームを引っ張れるはずだと考えました。松岡さんのトレーニングの効果もあってか、春先から自分個人の調子は良好でした。ただ、チームは勝てず、積みあがっているのかもわからない状態でした。そして迎えた朝鮮大戦。島田も万全でない中、圧倒的に格上の相手との対戦でした。今思うと、チームでどれだけやれるのかという考えよりも、まだチームは出来上がっていないから自分が何とかしないと、という考えが先走っていたような気がします。そんな傲慢さがあったからなのか、ご存じの通り例を見ないような大怪我をすることになります。脛の骨が膝の内側にずれ込む感覚が確かにあり膝を脱臼、後十字靭帯と外側側副靭帯を断裂、内側の半月板、脛骨を損傷しました。グラウンドの外に運び出され、ベンチにいた島田になぐさめられながらメソメソと泣いてしまいました。泣いた理由としては悔しさや申し訳なさもありましたが、チームの未来への悲観もありました。チームを信頼し、率いていくべき立場であるにもかかわらず、終わったと勝手に思いました。そして苦しかった前年を思い出してはまた泣きました。そもそも、チームを信頼しているのであればあの場面では自分が突っ込むのではなくBKにパスしていたはずです。今でもフラッシュバックして後悔するくらい、自分は思い上がっていました。終わっていたのは僕でした。

怪我直後は頭がぐちゃぐちゃになり、さとが絶対戻って来いよと言ってくれたことや、晴也、じゅん、日高、木村がいろいろなものを府中病院に届けてくれたことくらいしか覚えていませんが、怪我の全貌が明らかになるにつれて絶望していき、絶対復帰すると言いつつ心は落ち込みました。チームは国公立大会で東工大に負け、離脱しながらもどん底であることを感じていました。振り返っても一番苦しい時期にチームにいられなかったことは同期にも後輩にも本当に申し訳なく思っています。この時期に澤井に試合の分析を任せてもらえていなかったら、いろいろと気持ちが切れていたかもしれません。ありがとう。

情けなさと申し訳なさでふさぎ込む日々でしたが、慶應戦を見て少し気持ちが変化しました。そこにはチームとして大きく成長したみんながいました。ますこには、お前がいなくなってからチームよくなったわと言われました。返す言葉もありませんでした。でも、みんなのおかげで申し訳なさからは少し解放されることが出来ました。

そこから成城戦、合宿を通して、僕の思い上がりをこっぱみじんにするくらいにいいFW、いいチームが出来上がってきました。そして自分がプレーすることが出来なくなり、練習を外から見ることしかできない立場になってみて、こんなに危ないスポーツをやって、しかも勝つためにきついことが出来るみんなや、腐らずリハビリを続けることのできるみんな、チーム全体を見て人のために動けるみんなは実はすごいんじゃないか、と、怪我前よりもはるかに強く実感するようになりました。

対抗戦でみんなが頑張っているから、自分も、だいぶ細くなってしまった足で必死にバイクを漕ぐことが出来ました。苦しいときには松岡さん、白石、村山、澤井たちに追い詰めてもらいながらなんとか数値が上がってきました。そして復帰戦となった先週の東大B戦。岩澤のナイスキャリーや平手さんのオフロードもあり、22m内のチャンスでした。狙っていたシチュエーションでラックに入れたので、ラックの上を越えて持ち出しました。一瞬静寂があって、その後ベンチが大騒ぎしているのが聞こえました。多分あの瞬間は一生忘れないと思います。チームを信頼せず怪我をし、チームが苦しいときに何もできなかった自分のトライを、自分よりも喜んでくれていました。見たら泣いてしまいそうでベンチを直視出来ず、ハイタッチしに来た樋口とへいたとも目が合わせられず、そそくさとハーフラインに戻ってしまいました。みんな人が良すぎると思います。

怪我をしてよかった、とはまだ到底思えませんが、練習が終わった後自分がVMAを走る頃になってもまだ自主練を続けている選手が何人もいることや、練習を外から見て明らかに動きがよくなっている下級生を見られること、練習中のショートトークで指摘しようと思ったことを誰かにその前に言われちゃうことなど、怪我をしなければ感じられなかったチームのいいところがたくさんあります。

虫のいい話かもしれませんが、こんなチームの一員として、自分も最終戦に出たいと思っているし、出られる状況になる、という信頼を置いています。今回は心から。

こんな風にポジティブに今年を振り返ることが出来ているのも、本当に周りの人たちのおかげだなとこの時期になって改めて感じています。正直書ききれませんが、少しずつでも言葉にしたいと思います。

へいた。ここ4年の一橋のFWはへいたなしでは成立しなかったと思う。相当つらい時期もあったと思うけど、強いFWの核でいてくれてありがとう。最終戦一緒にスクラムを組めることを信じています。ニーダウンで。フロント会は四つ角以外でやろう。

樋口。ビデオ見ていてタックル強すぎて笑っちゃうことがよくあった。ずっと樋口に負けないようにフィールドプレー練習してました。ラスト一年はもしかしてチームで一番真面目なんじゃないかと思ってたけど、昨日の風呂のますこにキレてなかったから評価はガタ落ちです。浦和湘南は開催形式をちゃんと考えよう。

後藤。へいたと並んでセットプレーの中核です。危ないスローを何回も取ってくれてありがとう。最後まで怪我無くアングルでぶち抜いてください。卒業する前にもう一回くらい後藤の部屋に行ってペットボトルの数を数えたい。

日高。人数が少ない中でロックもフランカーもジャンパーもできる日高がいてくれることの安心感は本当にありがたかった。上智戦のジャッカル、俺も一生忘れないと思う。小平からの引っ越しはお互い手伝おうね。

松岡。言うことないくらいいいFLになってくれました。実はFWで近くにいる松岡とプレーするのがすごい楽しみです。最終戦はラインアウトをきれいにスティールしてくれると信じています。頼んだぜアーディ。

山本。HOらしい器用さがプレーに表れていて、いつもうらやましく思ってました。またスローが下手になったから、教えに来てほしいです。大変な時だと思うけど、俺はどんな形でも山本が戻ってくれたらうれしいです。

木村。今年一年で本当にいいFWになったと思う。フロントでありながら80分体を張り続けるという、一橋ラグビー部に伝わる試練にもよく耐えてくれたと思います。キムが頑張っているからリハビリを頑張れた瞬間が確かにありました。どこにでも連れてくので行きたい店を探しておいてね。

村山。大きな怪我無くここまでこられて本当に良かった。高校時代は大外でよく休んでいた村山が、今年は10shapeをバカスカ止めていて見ていて痛快でした。小川と村山とグラウンドに立ちたいです。リハビリにも声掛けしてくれてありがとう。でもグループに高校の時のツイート貼ったのは絶対許さないからな。

だいすけ。一生頭が上がりません。CTBからHOという無茶苦茶なポジション変更にも関わらず、本当に最高のプレーを毎試合見せてくれました。疑問点をすぐ見つけて解決するところが一番すごいと思う。ふぐでも懐石でもなんでも連れていきます。岩澤を静かにさせるのは任せたよ。

高田。今も十分すごいけど、きっともっとすごいプレーヤーになると思います。試合に慣れてきて落ち着いた高田のプレーを見るのが今とても楽しいです。

二村。コンタクトでは闘争心がむき出しになるのがすごくいいと思います。ウエイトがついて大暴れする姿を楽しみにしています。

島村。フィールドプレーがすごくうまくなってるなと思います。HOは難しいけど楽しいポジションだから、これからもやってみてくれたらと思う。練習にはいつでも付き合います。ここに書けるような会話を島村としてないことに気づきました。もっと真面目なことも話そう。

瀧瀬。いろいろと覚えることも多いし、できなくて悔しいこともあると思うけど、決して焦らずに強くなってほしいです。今やってる自主練は絶対に先につながると思う。相手をぶっ倒す感覚をつかめるとラグビーがもっと楽しくなるはず。

岩澤。浦高っぽくないなあと思っていたらタックルは浦高だった。怪我に気を付けてファイターの道を突き進んでほしいです。最近は怒られてないから、そろそろ何かありそうで怖いです。

まきげん。たまにいる恐怖感じてないマンになりそう。B戦でのタックルやジャッカルで手ごたえがあったと思うから、自信にして練習を続けてほしい。ウエイトも勤勉に続けているから、絶対にいいプレーヤーになれると思います。

平本さん。ますこも言っていましたが、今年の東大戦、平本さんがいてくれて本当によかったです。勝ってくれて嬉しかったわと言ってくださった裏にどんな感情があったのか考えると胸がいっぱいになり、何も言えず頭を下げることしかできませんでした。少しでも恩返しになっていたらと思います。

望月さん。望月さんのおっしゃっているチームで戦うことの重要性と、その難しさを感じ続けた一年間でした。お忙しい中、プレーのことだけでなくまとまりの部分までご指導いただきまして、本当にありがとうございました。

増田さん。一橋のBKはFWから見てもこの一年間で非常に大きく成長したと感じています。これからもぜひ一橋ラグビー部をよろしくお願いいたします。

松岡さん。今年のSCを松岡さんにお願いして本当に良かったと思っています。対抗戦をここまで大きな怪我なく戦えていることも、当たり負けせず走り切れていることも、本当に松岡さんのおかげです。残り少なくなりましたが、最後まで島田組のサポートをよろしくお願いいたします。個人としては、万全まで戻すことが出来ずすみません。僕が一番ぶっ倒れる可能性が高いので見ておいてくださいね。

阿久津さん。3年から引っ越してきた自分も暖かく迎え入れてくださり、とても嬉しかったです。心身ともに阿久津さんのごはんで命をつないだことも少なくありませんでした。

竹内さん。大学ラグビーに耐えられる体を作れたのは竹内さんのおかげです。怪我を気にかけてくださり、ありがとうございます。体と相談しながらなんとかプレーできればと思います。

吉田さん。ポジティブな言葉でFWセットプレーを中心に助言を下さりました。お忙しい中試合にも出場していただき、本当にありがとうございました。

近藤さん、OBの皆様。島田組始動当初の計画の立て方、運営方法、問題への対処など、何から何まで皆様のご協力なしではラグビー部の活動は成り立たないということを強く感じました。特にFWのOBの方々には、自分が怪我をしたこともあり大変お世話になりました。お忙しい中で練習に参加していただき、時に試合にも出場していただいたことに本当に感謝しています。何卒これからも現役部員たちをよろしくお願いいたします。

両親。父が正月の大学選手権に連れて行ってくれてなかったら、こんなに楽しいスポーツには巡り合えていませんでした。仮面浪人するとか馬鹿な事を言い出した時に、話を聞いてくれてありがとう。とんでもないわがままを通しましたが、本当にいろいろな、得難い経験ができました。いつの日か恩を返せるように頑張ります。

長いうえに駄文でしたね。なんだか全然うまく気持ちが伝わっている気がしませんが、とにかくみんなを尊敬して信頼して感謝しているということだけ伝わってくれていればいいと思います。

さて、最後はこうせいに回します。島田はもっと畏怖されていいはずなのに全くと言っていいほど恐れられず、何かしらでいじられている不思議な奴です。でも、そんなところが島田のいいところなのかもしれない、と思います。

今年一年間過ごして、島田がいいときも悪いときも常にチームのことを考えていた姿を見てきました。その裏の苦悩をわかってあげられたとは思いませんが、前を向いて引っ張り続けてきた島田を本当に尊敬しています。最後まで一緒に頑張ろう。