うちのラグビー場から見える月はやけに大きく見える。聞くところによると、地平線に近い月は目の錯覚で天頂にある月よりも大きく見えるらしい。ラグビー場の辺りは建物が低く空が広いから、遮るものもなく、大きく見える月に余計気付きやすいのかもしれない。
 日没が日に日に早くなり、対抗戦シーズンの到来を身に沁みて感じるこの頃だ。大きな月の浮かぶ日の暮れたラグビー場で個人練をするのも今年で最後だと思うと、今は帰るべきになりにければ…と言って嘆きたくもなる。あそこでぴょんぴょん飛び跳ねているのは月のうさぎだろうか。いや、あれはきっと、個人練をするように促すビリケンさんの遣いなんだろう。あと2ヶ月半精進します。

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 早いもので、私も4年生になり最後の部日記を書く時が来たようです。みうちゃんを筆頭に根強いファンが存在する一橋ラグビー部の部日記の中でも4年生の最後の部日記というのはやはり特別で、私もそれを通じてこれまで多くの先輩方の生き様や、試合前日に奮い立てられるような熱い思いに触れてきました。ジャージプレゼンは序列とポジション柄後半が多く、部日記の順番も何故か毎回学年最後でしたが、今回は先頭です。歴代の先輩方の名文には遠く及びませんが、初戦に向けてチームに勢いをもたらす文章を書きたい次第です。
 そう思っていたのですが、過去の部日記を読み返していると何だかセンチメンタルな気持ちになってきて眠れない夜。結局感傷的な駄文になってしまいそうですが、ご了承下さい。(遡ってみると、1年生の私の部日記での第一声は「ヨーナポット・キーヴァーノク」でした。その時は特別意味はなく、普通にこんにちはと書き出すのがつまらないというだけの理由でそうしたんだと思いますが、ハンガリーにいるバリントまで聞こえたのでしょうか。不思議な縁もあるものです。)

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 なぜ自分はラグビー部にいるのだろう。
 部活動をしたとて何になるのだろう。

 体育会学生の多くが1度は考えたことのある問いではないだろうか。かかる時間や労力に対して、その成果は見えづらい。中学生や高校生の頃のように、特段周りがやっているものでもない。
 ラグビー部に入ることが自分に何をもたらすかなんて、入った時には大して考えもしていなかった。コロナに大学生活1年目を滅茶苦茶にされ、ただただ時間だけが過ぎていく虚しさに反発するようにラグビー部に入った。PACEの後は白石と山本とTFCに行くことが日課になった。(おかげでPACEの人との仲は全く深まらなかったが。)高3の春以来久しぶりに吸うラグビー部特有のアットホームでボーダレスな空気が心地よかった。コロナの感染拡大は中々収束せず、2年生になっても公園練習の期間が続いたが、あの頃先輩方や同期と過ごした時間は今も鮮明に覚えている。3年生になる頃には色々と試行錯誤することが増えた。新歓活動でどう新入生にアピールするか。どうすれば退部者が減り、休部者が戻ってこられるか。学業や就活との両立も。どこか部活動を100%楽しめないような、没頭できないような感じがして歯痒かった。最高学年になり再スタートを切ったのも束の間、それまで朝寝坊を除きシーズン中に怪我や病気で休むことがほとんど無かったのが嘘のように、肉離れに次ぐ脳震盪に次ぐ体調不良。正直悔いだけが残るけれど、幸いまだ時間は残されている。今プレーできることに感謝をして、できることを精一杯やるだけだ。
 あの出来事は最悪だったけどこういう点では良かったなとか、逆にあれには未だに意味が見出せないなとか、ラグビー部での思い出の一つ一つに対して様々な感情が浮かんでくる。きっとこれからも、自分が何故それをしているのか分からなくなって苦しく感じたり、苦しい中でももがき続けなければならない時がいくらでもあるんだろう。そういう時にきっと、ラグビー部での日々が自分に力をくれる。

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 ラグビー部でお世話になった全ての方々へ。

 月並みな言葉にはなってしまいますが、本当にありがとうございました。皆さんとの出会いが、私の大学生活を本当に豊かなものにしてくれました。全員の名前と全員との思い出を挙げたいくらいですが、初回担当ということで時間があまりにも足りません。あまりやり尽くしてしまうのも後ろに怒られそうなので、その辺は後続に任せます。毎度訳のわからない散文を書くという私の役目は果たしました。

 明日は武蔵戦。2年・3年次に計3度対戦して1度も勝てていない、届きそうで届かない相手。でも今年のチームの仕上がりなら、あの1点を埋められる気がします。思い出すのは山梨学院戦の前半の後半、立て続けにトライを取って相手を押し込んだ勢い。前半の前半からあの勢いで襲い掛かれるように、自分もアップから全力でチームに着火します。

 次は西尾です。会うのは合宿の最終日ぶりでしたが元気そうで良かったです。彼との思い出は尽きませんが、一つ挙げるならば、試合で彼と交代する時や、どちらかがフィールドにいてもう片方が入る時のあれです(「ハイタッチ 低い位置」で検索したらちゃんとロータッチ、ローファイブという対義語が存在するらしい)。私はあれで一気にスイッチが入ります。ポジションが近いからか何でか彼としかしないですが、それが良いのです。もう何回かはしたいです。(真面目な話かい)

 明日は助っ人外国人級の活躍を期待しています。

 それではこの辺りで失礼いたします。









Hasta La Vista